スラッシュ・メタルの決定盤のひとつと言えそうな本作『Master of Puppets』は、間違いなくメタリカの最高傑作だ。また、ベーシストのクリフ・バートンが参加した最後のアルバムでもある。権力とその乱用をテーマとした、複雑で知的な楽曲群が、時速160キロ以上はありそうなスピードで演奏されている。だが、すぐに曲が終わってしまうわけではない。全8曲の総タイムは1時間を越えるのだ。この事実によって、一瞬たりとも退屈させないアルバムという印象はかえって強くなることだろう。
前述のテーマにさまざまなアプローチで挑戦するメタリカは、音楽性だけでなく歌詞でも洞察力に満ちたところを見せている。「Welcome Home (Sanitarium)」は施設に収容された男の視点から、「Disposable Heroes」は兵士の立場から語られる。もし最近のラジオから流れるメタリカしかご存知ないなら、ぜひ本作を聴いていただきたい。びっくりするほどハマってしまうはずだ。(Genevieve Williams, Amazon.com)