著者の原点を覗いてみたい方へ。個人的には最愛の一冊。
★★★☆☆
★3の(特)中。
著者の処女短編集。
大学生の二人のちょっとスリルな一晩『魔法の時間は終わらない』。
とんでもない家庭に子守のバイトに来てしまった女性の、情けなくも快感なひととき『おいしいお仕事』。
月野流旧約聖書『Victim of Love』。
7月7日の星祭り。期待と理不尽な残酷さの末に見つけた夜空に瞬く星『星に願いを』。
お嬢様とメイド。百合の二人が月夜の晩に蝙蝠の血を酌み交わすオバカなエロコメ『ペパーミント★ラブ』。
夢と現実の境目の説明が微妙な姉弟のシリアス系『親にはナイショで。』。
新婚夫婦と、妻の妹の屈折した性『ガラスのワルツ』。
性を売って糧とする少年が叔母への愛に苦しむシリアス系『Waiting for the Dawn(前後編)』。
万引き少女と店員青年の、ちょい不協和音なラブソング『コンビニ』。
さすがに1冊目なので構成的にヘタレな部分も多々あります。
濃いエロを描こうとしてるのが伝わってきますが、消しはバカデカイのでポルノとしては半端です。
少女コミック系の作品と、ちょい鬱入ったレディコミノリの作品が混在してます。
少女漫画家になりたかったけど断念するしかなかった。エロならプロとして描かせてもらえるから敢えて選んだ。己が理想とプロ意識との葛藤に苛まれつつも、魔法のパワーを借りて、何とか前向きに邁進しようとした著者の思いが伝わってくる一冊(無論、憶測)。
後書きにある「明るく楽しいHまんがを追い求めて明日を生きるっ」てのとは正反対な鬱な狂気が輝いてます。
『人生を死にものぐるいでオバカに逆走したジャニス・ジョップリン』みたいな、月野定規の本質が滲み出ててステキすぎ。
夜の野原で月までの距離を定規で測ってみたら、両眼を瞑ったその先に、杓子定規では決して測れない狂気な浪漫が確かな輝きをもって存在していましたとさ。