『スター・ウォーズ／エピソード2　クローンの攻撃』に先駆け、世界で初めてフィルムを使用しないHD24Pカメラで、デジタル撮影されたフランス映画。監督はジャン・ピエール＝ジュネ監督のもとで特撮を手がけていたピトフ。
   19世紀のフランスで、全土を揺るがした狂気の連続殺人事件が発生した。犯人は「鏡の顔を持つ男」だ。「その鏡に映った者は、必ず死ぬ」という噂が囁かれる中、名探偵ヴィドックが調査に乗り出す。
   ピトフ監督独自の世界観がビジュアルにも反映されており、色彩を退色させた風景や建物などが単なる技術上のトライではなく、ダーク・ファンタジーとも言うべきストーリーを語る上で重要な装置として機能している。素早いカッティング、ビジュアルとしてのカッコよさを優先したと思われる画、現実音と非現実音がないまぜになることで不安感を煽る音響効果。語るべきストーリーとそうしたテクニックがマッチングすることで、初めて描き得た映像世界がここにある。（斉藤守彦）