重い事実
★★★★★
日本の敗戦によって、サハリンに取り残された朝鮮半島出身の人々がいました。
彼らは、なぜ祖国に帰れなかったのでしょうか。そもそも、どうして彼らがサハリンにいたのでしょうか。
在サハリン韓国人の帰還運動に長年参加した著者が、丹念な調査と現地での聞き取りを通じて描き出すのは、政治的な思惑とイデオロギーに翻弄される朝鮮系住民の人々の姿です。
彼ら自身の意思とは無関係に「強制連行の被害者」にされてゆくサハリンの人々、安易に「支援」を口にし、問題を紛糾させる無責任な政治家……
しかし、印象的なのは、このような中でさえ、たくましく、生き生きとした朝鮮半島出身者の人々の姿です。その姿からは、彼らが決して「かわいそうな被害者」といった存在ではなく、それぞれの意志を持った人間であること、そして、そんな彼らに、作者が強い共感を抱いていることがうかがえます。
サハリンの朝鮮系住民の中には、ソ連時代に北朝鮮から移住した人々も少なくない、と言う事実を初めとして、サハリンの朝鮮系住民について、この作品が初めて取り上げた内容も少なくありません。作者の結論に同意するか否かを問わず、サハリンの朝鮮系住民について考える際には、必読の書と言えるでしょう。