社会学には、理論社会学あるいは社会学理論とよばれる領域があり、文字通り社会学の理論枠組の研究を行なっている。この本は、古今(東西、というわけにはいかないが)の主要な社会学の理論家を、マルクスからギデンズ、ルーマンなどまで、各章一人ずつ取り上げて解説するスタイルである。重要な人物はほぼもらさずとりあげている。スペースの関係上、あまり詳しい解説はなされていないが、だいたい基本的事項は抑えていて、全部を読めば、社会学理論の基礎知識を人名とともにマスターすることができる。
数名の社会学者が分担して書いているので、章によってスタイルはちがう。別のレビューアーはシュッツの章を賞賛しているが、私的にはこの章は個人史的側面に傾きすぎている気がする。ブルデューやギデンズの章がバランスがとかつ明解にかれらの「理論」が紹介されているように思う。
各章の最後に読書案内がつけられている。主として邦訳の原典があげられている。これはありがたいが、できればすぐれた解説本もあげて欲しい気がした。
社会学での理論離れが進行している現在、このような社会学理論の入門書が出版されているのはうれしいかぎりだ。ということで、星5つです。