Sleeping With Ghosts
価格: ¥2,690
けばけばしく両性具有的なプラシーボの音楽においては、セックス、ドラッグ、ロックン・ロールが際立って重要な役割を演じてきた。『Sleeping With Ghosts』は、それまでのアルバムと比べると多少おとなしい内容で、体液の交換のことよりも、人間関係にまつわる歪んだ心理学的な側面がテーマとなっている。とはいえ、フェティシズムの入りこむ余地がまったくないわけではない。たとえば「This Picture」は、明らかにサド・マゾヒズムについて歌ったもので、かつてスエードがやっていたようなトラッシュ・グラム・ポップの匂いをふりまきながらスタートする。「The Bitter End」――“僕らの感覚はすっかり麻痺してしまったから(Since we're feeling so anaesthetized)”――は、傑出していて、凶暴で、宿命論的な視点でつづられたロックな曲だ。ブライアン・モルコは、明らかに天気のくだらない話題にうんざりしているし(シラけた「English Summer Rain」は、リズミックでエレクトロニックな衝撃音に導かれた抑え目のポップ・チューン)、ドアーズの影響が見られる4分の3拍子の「Protect Me from What I Want」では、誘惑から自分を引き離してくれと祈ってもいるのだが、本作で打ち出したテーマが彼に似合っていないのか、それともテーマに魅入られるあまり変な方向に行ってしまったのか分からなくなるようなところが時々ある。とはいえ『Sleeping With Ghosts』は、毎晩スラムダンスが繰り広げられるゴス系クラブで聴いても精神分析医のカウチで聴いても充分に楽しめるアルバムとなっている。(Kevin Maidment, Amazon.com)