華麗なメロディーを生み出すことにかけては、やはりピアースは並外れた才覚の持ち主といえるだろう。本作『Amazing Grace』に収録されている11トラックにも、彼は興味深いタッチをめいっぱい持ちこんでいる。ペダル・スティール・ギター、ゴスペル・コーラス、そしてタバコの煙が真夜中の空気へと消えていくときのようにゆらめくトランペット…。だが、本作には『Ladies and Gentlemen~』のときのような全体のテーマとなるものがない。アルバム中に散在している、前述のようなインスピレーションの発露こそが最大の聴きものとなっているのだ。ピアースは自己模倣という名のいつ果てるとも知れないループにとらわれている。相変わらず美しいが、『Amazing Grace』には単なる定型に陥ってしまったところが多すぎる。(Keith Moerer, Amazon.com)