自分自身が生涯にわたり,日々刻々と,徹底的に坐禅に生きた。その生きた境涯をそのまま語るから,頭でっかちの知識,学者流の,評論家流の読みかじり,聞きかじりの知識が皆無だ。ありのまんまの自分を,これがわたしの仏法だと,威張りも衒いもせずに,率直に,単純にさらけ出す。
爽快このうえない。しかも,面白いエピソード満載だ。人間の業,弱点を,知り抜いている。大真面目に,ちっぽけな我執にしばられて,見当違いの方向に一所懸命生きる人間の様は,滑稽である。それは自分の知っている自分の姿だ。沢木老師が眺めた沢木老師自身の姿でもある。微苦笑を誘う。沢木老師が笑い飛ばしてくれる。
沢木老師はもとより,弟子の内山興正老師や酒井得元老師も,名人落語家のような顔をしている。落語と坐禅はどこか通じ合うのかもしれない。
いつもめでたい。人間に生まれてほんとうに素晴らしい。
いつもどこでもどんなときでも,心底このように気づきながら,日々喜んで,大安心のうちに生きるための坐禅。
不安や悩みを吹き飛ばし,気分爽快になりたい人,坐禅をしたくて励ましてほしい人には,きわめて善い本だ。