失われた15年を振り返る
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GDP、短観、消費者物価など数多い経済指標が網羅されて、その役割・読み解き方・作られ方から不満足な点まで細かく指南していただけます。各データの発表時期や担当官庁も記されていて何時でも手元においておきたい1冊です。
また、旧版の発刊(1985年)以降に発生した15年に及ぶ長期不況を絶えずデータと関連付けて論じている点もこの本を「買い」とする理由の一つです。物価や財政・金融政策の章では、インフレ・デフレ制圧に果たすべき中銀の役割を強調し、バブル潰しにやっきとなった結果デフレを長期化させ、さらに景気動向を過信しゼロ金利を解除したためデフレを深刻化させた日銀の「前科」についてもきっちり触れています。
さらに目先の現象に煩わされない冷静な議論が展開されるのもすばらしい。例えば、昨2006年の原油価格上昇については、主に投機筋の動きなどに注意を払うべきで一時的であると説きます。巷間でよく喧伝される中印経済成長による供給不足の可能性については、そもそも世界全体の経済成長による需要増加について長期的には産油国に供給増加、工業国に一層の省エネ技術開発のインセンティブを与えるのが経済原則から得られる解であり、直ぐ石油危機につなげるのは早計に過ぎると戒めます。
このように単なるデータ辞典の枠を超え経済学的知識も学べる実にお得な本になっています。おすすめ。