増加する高齢者の孤立、介護、医療そして貧困に対症療法的解決策はどこまで有効なのか
★★★★☆
後期高齢者(この言葉は不評ですが確実に存在します)への道を歩みつつあるレビューアーとしては少々気分が沈みます。勿論それは本のテーマの為せる技であり、内容のせいではありません。9名の現場関係者が実例をもとに10章構成で問題点の指摘と解決策を提案しています。高齢者にも拡大する「格差」、それだけでは生活できない「国民年金」、維持困難な「特老ホーム」、家族関係の貧困と「経済的貧困」、問題はあるが最後の受皿化している「無届け有料老人ホーム」、終の住処としてあまりに寂しい「路上生活」、都市部と様相を異とする「地方高齢者」、厳しい現実「医療費負担」、対応が難しい「生活保護受給」、孤立は結果なのか原因なのか「社会からの排除」の現場報告はこの問題の深刻さを示しています。そもそも最終的には高齢者(経済的に恵まれているか否かにかかわらず)に安心と救いはあるのかと思わせる説明が続きます。あるべき姿も示されていますが正直全部を解決する復元力は現在の日本に残されているのでしょうか。個別に対応していこうとすると(高齢者だけでなく雇用、教育、そして出生率も待ったなしですし)、足したら絶対的持ち駒不足が顕在化してしまうような。悩みを増してくれる現場レポートです。