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この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

価格: ¥700
カテゴリ: コミック
ブランド: 双葉社
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「わしが死んでも一緒くたに英霊にして拝まんでくれ。笑うてわしを思い出してくれ。それが出来んようなら忘れてくれ」 ★★★★★
 本書は、各方面から賞賛を浴び、数々の賞を受賞した『夕凪の街桜の国』の著者・こうの史代氏が前作に続いて戦争と広島をテーマとし、『漫画アクション』誌上〈07・1・23〜09・2・9号〉で発表した作品である。
 北條家に嫁ぎ、家事労働に日々追われながらもようやく呉の街にも馴染んできた・北條すずはヤミ市で遊郭の女・白木リンと出会い友達となったが、彼女と夫・周作との関係に疑惑がよぎるなか戦局は悪化し、ついに呉の街にも大規模な空襲が起こり、徐々に戦争の影が北條家の生活にも脅かす様子〈昭和19年7月〜20年4月〉が丹念に描かれている。

 上記の理由から悩んでいるすずの元へ水兵となった幼なじみの水原哲が現れ、彼に納屋を貸し、一夜だけ哲のそばにいる事を許した周作の心情や夫に疑惑を持ちつつ、心のどこかで思いを寄せていた哲を前にその優しさに惹かれながらも夫への操をたてるすずの入り組んだ複雑な心情にはどこかやるせない気持ちが伺える。また、その事を含めて全てを受け止めて自分の気持ちを伝える哲の心情にも切なさを覚えた。
 
 他にも“鬼イチャン”という呼び名で親しんでいた兄・要一の戦死した遺骨を受け取る挿話や白木リンと同じ遊郭の女・テルちゃんとの挿話など自分の知らない当時の時代背景を生活の観点から随所に描いており、そして後半にはすずの住む呉の町にも空襲が起こり、それまで戦時下のなか貧しくも慎ましく暮らしていた北條家にも戦争の影が忍び寄る様子が淡々と描かれている様子に怖さを感じずにはいられなかった。 

 また、著者の別作品『さんさん録』と同様に本作でも丹念に家事の場面が描かれている様子もこうの漫画の特徴である。余談ではあるが、本作に登場する白木リンもどこか『さんさん録』に出てくる仙川イオリを彷彿させるなあ。
夫婦と言う絆、戦争という暗雲 ★★★★★
上巻に続き、呉市の北條家に嫁いだ「すず」の、日常を描いた物語。その中巻。

ほのぼのした話も多く、戦時中だということも忘れそうになったりしますが、闇市とか空襲警報とか、日常の中にじわじわと戦争という暗雲が立ち込めてきます。

結婚、そして出産が一種の義務のようなものだった時代。なかなか子供の出来ないすずは、遊郭の女性と知り合ったり、昔馴染みの水兵さんと再会したりする中、様々な想いを受け止め、夫婦の絆を試されることになります。

空襲があったり、兄が戦死したりと、大事件も多々起きるのですが、この時代の人々にとってそれはごく当たり前のことであって、大袈裟に驚くこともなく日々を懸命に生きるだけのすずの姿に、なんだか感心してしまいます。

次の下巻では、ついに「昭和20年8月」を迎えてしまいます。その時すずは、この一家はどうなるのか……読むのが怖いくらいです。けれどやっぱり、最後まで読んでみたくなる良作ですね。
この「中」の世界で、止めて欲しい ★★★★★
この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)のレビューでも書いたことだけど、もうここで止めて欲しいと願います。歴史は止められない。歴史的事実を変える事は出来ない。それはわかっていながら、この素晴らしい市井の名もない人々の生活を、どうかこのまま続けさせてあげて下さい、と願います。

なんの大きな出来こともなく。普通の人が、普通に恋し、普通に夫婦になり、あるいは子どもたちが(戦時下と言う環境でも)子どもたちらしく、悩んだり、喜んだり。。。
そう、普通に生きることの素晴らしさがひしと伝わってくる。
母はこうして生きていたのだろう。叔父や叔母もこうして生きていたのだろう。父は満州に行っていたなぁ、とか思いを馳せます。

これほど控えめで、しかし力強い反戦の、平和の物語はないでしょう。
声高にスローガンを叫ぶばかりが能ではない。
素晴らしい作品に出会えました。
でも、「下」を読みにかかる勇気がないなぁ。
子ども達にも手渡したい! ★★★★★
戦争の体験談は、その方の伝えたい思いとエネルギーの大きさに、
(戦争を体験していない私は、)悲しいかな腰が引けてしまう。

同世代の方が検証して描かれたからなのか、
物語として純粋に
戦時下に生きる主人公に気持ちを添わせて読むことができました。
枝葉をそぎ落としつつ・それでいて丁寧に描かれた市井の人々の日常と
けなげに明るく生きる主人公に涙が出ました。

子ども達にもさりげなく差し出したい物語です。
誠実な追体験 ★★★★★
平凡社のホームページで、こうの氏が連載しているエッセイを見つけたが、最新号には本人が戦争作品を描くときに感じたことが書かれていた。直接体験しなかった重大な事実に個人としてどう向き合うかという点について、この上ない誠実さが表れていた。
こうの氏は資料や他人から丹念に事実を集め、戦時下の生活を追体験していった。その結果がこの漫画である。漫画ならではの仕掛けも随所に隠れているから、読み返すたびに楽しめる(中巻の冒頭の径子さんの着物が「小姑」柄だということに最近やっと気付いた)。しかしそれ以上に、作者の誠実な人柄に触れることができるのがうれしい。