盛大なダンス・ビート、巧妙なサウンド効果などの“知恵(Marbles)”に満ちた表面の裏には、頑固で年老いたプログレという名の野獣が横たわっている。にもかかわらず本作からは、かつてフィッシュがバンドを仕切っていた時代の気分よりも、現代的な感覚が強く伝わってくる。「Fantastic Place」は「Colour of Spring」時代のトーク・トークと間違えてしまいそうな作風だし(ホガースはなかなかうまくマーク・ホリスになりきっている)、「Don't Hurt Yourself」はマニック・ストリート・プリーチャーズの「If You Tolerate This」を借用して、レヴェラーズの反抗精神とフォークっぽいギター演奏をプラスした感じだ(ホガースはマーク・チャドウィックの役も演じられる)。ただし、誤解なきように言っておくが、ジェネシス的なサウンドも期待どおりに、だが決して過剰にならない程度に出てくる。長ったらしい演奏も相変わらずだ。美しい「Angelina」には、気が滅入りそうな、蛇足とも思える2分間のイントロが付いている。
どんなに頑張ろうと、マリリオンがレディオヘッドほど重要で今という時代を反映した存在となる日は決して来ないだろう。それでも、熱心なファン(かなりの人数にのぼる)は、これからもずっとマリリオンを信じていくはずだ。この『Marbles』は、そんな彼らの気持ちに精いっぱい応えている。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)