2004年のバッド・シーズ結成20周年記念作。ロック色の濃い『アバトア・ブルース』、メロディを重視した内省的な『ザ・リール・オブ・オルフェウス』という、カラーの異なる2作品からなる2枚組だ。ニックの多彩な音楽性に両極から迫ることもできれば、全編を貫く彼の唯一無比のヴォーカルのダークな美学に浸ることも可能だ。長年の音楽的パートナー、ブリクサとの別離を経ながらも、ニック・ローネイをプロデューサーに迎え、その創造力の泉は枯れることがない。全曲の歌詞を掲載したフォト・ブックレット、布張りパッケージ、両ディスクに収録された画像データと、ヴィジュアルを含めたトータル・アートとしてリスナーを魅了せずにいない珠玉の作品だ。（山崎智之）