フランス・スペイン (ヨーロッパの家)
価格: ¥3,990
全4巻から成るヨーロッパの家シリーズの1冊で、フランス、スペイン編。両国の家としての特色をよく表した56軒が、豊富かつ美しい写真で紹介され、見飽きない。その魅力を一言でいえば、それぞれの家を通して人間の知恵と美意識が理解される、そのおもしろさということだろうか。
もとより国や地方の違いは自然条件や土壌の差を生み、そこに生きる人間の生活環境を決定する。家は人間と自然風土との調和の中から生まれた極めて文化的な創造物であり、家具・調度品も同類だ。使われた天然石・漆喰・木材・繊維は、したがって個々の素材の特性を主張し、その触感を味わわせるべくこちらに迫ってくる。住空間の多様さが写真を通して実感されるのだ。本書はフランスを地域によって5分類、スペインを3分類している。町並みの匂いや風や湿度まで伝わってくるのも、ひとえに写真家の手柄であろう。
たとえば、海峡を挟んでイギリスに向かい合うブルターニュ半島の集落ケラスコエには茅葺き屋根の民家が並ぶ。風が強く雨量の多いこの地方に適するよう、積み上げた石の間を漆喰で固めた平屋建てだが、この質素な家を眺めると、瀟洒なアパルトマンが競い合うパリと同じ国のこととは思えなくなる。家とは歴史の必然と土地の特性が響き合うものなのである。フランス政府公認建築家・宮谷敦と、美術史家・岡村多佳夫の解説が行き届き、旅行者への便宜も図られている。(松平盟子)
すばらしいです!
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