ただ1つ残念に思うのは、3大死因のうち、心臓病と脳卒中の解説が物足りなかったことだ。多くの人がこの病で命を落とすことを考えると、もう少し掘り下げて、たとえば、どの年齢階級で多いのか。どの地域、どの職業で多いのか、といった観点での記述が足りなかったように思う。今の俺は、どれくらいの確率で心臓病や脳卒中で死ぬのだ」という疑問に対して、統計学的観点から答え切れていないのが残念だった。また、人口全体の平均値で述べている箇所が多いため、「平均値のマジック」に陥らないように数字の意味を注意深く考える必要がある。
「事典」というので興味のある箇所だけを拾い読みするという方法もあろうが、文章自体は、一般向けに比較的平易に書かれているので、300ページ以上あるものの、通読は可能だろう。ひと通り読んでみて、人の死について向き合ってもらいたい。それが著者のねらいでもあろう。
興味深いトピックスも盛りだくさん。「生」と「死」について考えてみるのに、とても良い材料になります。