儚くも美しい情景・恋愛を絡めた時間論、そして“めまい”という鎮痛剤
★★★★★
『道草』は、僕が『彷徨』に次いで買ったアルバムです。
斬新さでは『残された憧憬』のほうが上ですが、こちらのほうが多くの人に抵抗なく親しめる内容でしょう。
歌の部分とコーダがまったく別の構成になって新鮮なショックを受けた「雨の露草に似て」、これが“あのモップス”にいた人なのか?と思うほど(すみません)透明感のある星勝氏作曲の「スタンド・スティル」、
中村雅俊に提供した「時」(社会に出てからズシンと響くようになりました)「盆がえり」(東京出身にもかかわらず、地方出身者のこころがよくおわかりです)等忘れられない歌ばかりですが、ストレスと体の不調で倒れそうな昨今、先行シングルとなりカラオケリストでも見かける「めまい」をよく口ずさんで癒されます。
ワイングラスの角氷・小舟を運ぶ潮風・暮れなずむ海の夕凪と言ったシチュエーションにも儚さと美しさを感じます。
テレビやFM・有線でポジティブさをあおる歌がやたら流れる昨今ですが、そればかりでは息苦しくてなりません。
“嘆きを代弁してくれる歌”こそが人を救うこともあるのです。