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Marbles

価格: ¥845
カテゴリ: CD
ブランド: Racket
Amazon.co.jpで確認
   本作『Marbles』の開幕部分で、スティーヴ・ホガースは、まず「世界が正気を失ってしまった」と歌う。この言葉はまんざらウソでもない。全国の心配性のポップ・ウォッチャーたちは、まさに正気を失いそうな、身の毛がよだつ思いを味わったに違いないのだ。というのも、完全に大人の音楽であるはずのマリリオンのシングル曲「You're Gone」(本作では2通りのバージョンを収録)が、ティーン主導のUKチャートにトップ10入りしたからだ。果たして風は吹き荒れた。世間の人々は、プログレの化け物が子どもをさらいに現れたと暗い顔でささやき合った。だが、ご安心あれ。本作が13作目のアルバムとなるマリリオンは、子どもなんか相手にしていない。

   盛大なダンス・ビート、巧妙なサウンド効果などの“知恵(Marbles)”に満ちた表面の裏には、頑固で年老いたプログレという名の野獣が横たわっている。にもかかわらず本作からは、かつてフィッシュがバンドを仕切っていた時代の気分よりも、現代的な感覚が強く伝わってくる。「Fantastic Place」は「Colour of Spring」時代のトーク・トークと間違えてしまいそうな作風だし(ホガースはなかなかうまくマーク・ホリスになりきっている)、「Don't Hurt Yourself」はマニック・ストリート・プリーチャーズの「If You Tolerate This」を借用して、レヴェラーズの反抗精神とフォークっぽいギター演奏をプラスした感じだ(ホガースはマーク・チャドウィックの役も演じられる)。ただし、誤解なきように言っておくが、ジェネシス的なサウンドも期待どおりに、だが決して過剰にならない程度に出てくる。長ったらしい演奏も相変わらずだ。美しい「Angelina」には、気が滅入りそうな、蛇足とも思える2分間のイントロが付いている。

   どんなに頑張ろうと、マリリオンがレディオヘッドほど重要で今という時代を反映した存在となる日は決して来ないだろう。それでも、熱心なファン(かなりの人数にのぼる)は、これからもずっとマリリオンを信じていくはずだ。この『Marbles』は、そんな彼らの気持ちに精いっぱい応えている。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)