拘禁反応の解釈や性犯罪事例への治療の取り組みがまとめられており貴重。
★★★★☆
司法精神医学研究というタイトルだが、内容はサブタイトルがより適切な印象である。つまり、司法精神医学全体を扱っているというよりは、矯正医療現場での取り組みと特記すべき症例をまとめており、内容的には多少なりともかたよっている。おそらく、矯正現場の精神科医がまとめた書物は日本初であり、拘禁反応の解釈や性犯罪事例への治療の取り組みがまとめられており貴重である。
個人的には、拘禁反応という用語は定義があいまいであり、DSM-ⅣやICD10にも採用されていないことなどから、混乱を招きやすいと考えている。分類の試みは知的好奇心のそそられるものであったが、実際にどの程度の割合で存在し、本当に予後を目的反応と捉えられるものなのかの考察は不十分と思う。また、DSM-Ⅳでは急性一過性精神病性障害等にあたる症例などが多いと考えられるが、DSM-ⅣやICD10の用語をほとんど使っておらず、個人的には論旨や実情がぼやけた印象をもつ。
全体としては、矯正精神科医療に期待の持てる内容となっているが、著者らが全員、すでに矯正現場にいないことがやや残念である。是非、現場に復帰して第2版を書いていただきたいと思う。