明日は我が身であるかもしれないこと
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当時、阪神・淡路大震災についての報道は多かったが、知らないことがどれだけあったことか。地震後一年間についての精神科医による報告に、建築や都市の観点、倫理学や福祉からの視点が加えられ、ボリュームがある一冊になっている。
あれから10年以上が経ち、社会的な環境の変化もある。通信ツールを見ても、往時よりも現在のほうが携帯電話が普及し、携帯メールが災害直後の連絡に有効だった例が増えている。PTSDについての概念も普及し(議論はあるが)、災害援助の経験も残念ながら積まれてきた。それでも、援助者の消耗、情報の窪地、鋏状の較差拡大など、引き続き課題となっていることもあり、難しさと苦さを感じる。
なにより、この当事者による、その時々の記録だけが持つ説得力は、時間を経て薄れるものではない。胸が痛み、目頭が熱くなるようなエピソードも多い。災害時の現象の諸相、予防と対応について、特にメンタルヘルスを主に、貴重な史料である。
この地震について、あるいは、災害について、私個人の体験を抜きにして語ることは非常に難しく、自分の身にひきつけて読まずにいることも難しかった。「次」に、私は何ができるのだろうか。