第二次世界大戦の危機が叫ばれるヨーロッパ。アメリカの新聞記者ジョニー（ジョエル・マクリー）は、国際平和条約を提唱するオランダの政治家ヴァン・メイア（アルバート・バッサーマン）と英国の平和運動の指導者フィッシャー（ラレイン・デイ）を取材するためロンドンに赴く。フィッシャーとその娘キャロル（ラレイン・ゲイ）に会ったジョニーは、ヴァン・メイアを追ってアムステルダムで開かれる平和会議に向かう。そこで彼が目撃したのは、ヴァン・メイア暗殺の現場であった。
   ヒッチコックの卓越したビジュアル・センスが次々に炸裂。雨の会議場前を覆い尽くした傘の中での要人暗殺、複数の風車がある場所で、ひとつの風車だけが逆回転している不気味さ、背景を映写したスクリーンの後ろに巨大な水槽を置いて表現したという旅客機の海中不時着シーンなどは、まさしく映画史に残る珠玉の映像の博覧会。ラストで戦意高揚的ニュースを送り続ける主人公の描写は、当時の社会的事情が反映されたものだろう。（斉藤守彦）