頑固さに惚れる
★★★★☆
今から20年程前に初めて読んだ。第一印象として残っていたのは、古書を綺麗にするために一度だけは固く絞った雑巾で拭くとよいということ、ビニール膜を書籍の大きさに合わせて切断しセロファンテイプで貼るといったブックカバーの流布していない時代に当時最高の技が披露されているという他愛のないものであった。その後市井の名も無き読書人の一人として何度も読み返すその都度発見がある。書物を愛する者(書痴?)の琴線に触れる書である。圧巻は文末のドストエフスキーの「貧しき人々」の一エピソード。亡くなった息子の書物を詰め込んで棺のあとを追うポクロフスキー老人のポケットから泥濘に落ちる本をどう判断しますか。読んでみて欲しい。