少数民族解放はビルマの大きな問題である
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1988年、ビルマでの民衆蜂起を取材するため、タイから陸路ビルマ・ラングーン入りを目指した山本氏は、ビルマ・タイ国境地帯・マナプローで反政府少数民族勢力・カレン民族同盟(KNU)の民族解放闘争を目の当たりにする。
この時点でカレン族は約40年もの間、外国からの支援に頼ることなく独自の力で、民族解放を得るために活動してきていた。この後、マナプローは民主化勢力の中心地となったこともあり、山本氏はこの地を含めビルマを7年間取材した。
本書は、ビルマの民主化・少数民族解放問題全般について書かれているが、中でもカレン族について、多くのページを使っている。カレン族の歴史、山間地での焼畑米農業を営みKNUに兵士を送り出す村での日常生活、カレン族と像の親密な関係といったことが、現地で生活を共にした山本氏ならではの視点でレポートされている。
また、カレン族だけではなくビルマ族も含めたビルマ国民が苦しんでいる強制移住、強制労働、タイで働かざるを得ない経済難民や、1988年カレン民族解放区へ避難してきた学生・市民・僧侶らのその後の反政府活動と彼らのジャングルでの生活、1992年バングラデシュへ越境避難したロヒンジャ・ムスリムの様子についても書かれている。
山本氏は1995年7月にアウンサンスーチー氏開放後、フリーランスのジャーナリストとしては、恐らく最初の単独インタビューをする機会を得たが、この時の貴重なインタビューも掲載され、アウンサンスーチー氏の人柄についてもうかがい知ることができる。
本書を読むことにより、ビルマ(ミャンマー)での問題が決して民主化問題だけではなく、少数民族の解放問題があり、この二つは車輪の両輪のようにどちらも同じだけ重要であることが理解できる。