今なお輝きを失わない近代詩
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「薔薇ノ木ニ/薔薇ノ花サク/ナニゴトノ不思議ナケレド」
この新鮮無垢な詩は荒れ狂った北原白秋の心の海をなだめようとするときに生まれた。
「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふり積む/次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふり積む」
わずか二行からなる「雪」と題する三好達治この詩は、多くの人に愛唱されている。今は失われた美しい日本の原風景。
「汚れつちまつた悲しみに/今日も小雪の降りかかる/汚れつちまつた悲しみに/今日も風さへ吹きすぎる」
中原中也の代表作品、恋愛詩中の絶唱であろうが、「悲しみ」は失恋によるものと狭く受け取ることもない。
「夢はいつもかへつていつた 山の麓のさびしい村に/水引草に風が立ち/草ひばりのうたひやまない/しづまりかへつた午さがりの林道を」
立原道造の「のちのおもひに」と題するソネット形式の詩。青春の痛みをあえかで優しい調べにのせている。
「けふのうちに/とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ/みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ」
「雨ニモマケズ 」の宮沢賢治が、妹トシの臨終を歌った絶唱。
本書には、14人の詩人の54編の名詩が載せられていて、それらの詩を声に出して読むと、いっそう詩情が深く迫ってくるにちかずいない。みずみずしい詩華集として編まれている名詩集(雅)