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The Little Prince

価格: ¥2,904
カテゴリ: Pop-Up
ブランド: Harcourt Childrens Books (J)
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サンテグジュペリの『The Little Prince(邦題:星の王子様)』の初版は1943年に出版された。彼を乗せたロックヒードP-38が偵察飛行中に地中海上で消息を絶った年の、わずか1年前である。それから半世紀以上を経た今でも、愛と孤独を描いたこの寓話はその精彩を少しも欠くことはない。物語の語り手は、サハラ砂漠に不時着し、壊れた飛行機の修理に躍起のパイロットである。しかしその修理作業はある日、羊を描いてくれないかと頼む小さな王子様によって中断される。「非常に不思議なできごとだったのにもかかわらず、あえて問い返そうとはしなかったのです」とパイロットは語る。「不合理に思えるでしょうが、人の住んでいるところから1000マイルも離れていて、死の危険と隣り合わせだというのに、私はポケットから紙の切れ端とペンを取り出しました」。 2人の会話から物語は始まり、思いがけぬ子供らしい指摘に触発されて、語り手の想像は広がっていく。小さな王子様は、住人が1人しかいない小さな星々を巡る旅を語りはじめる。
物語は驚くほど新機軸に満ちたひとつながりのシークエンスになっていて、偉大なおとぎ話というだけでなく、イタロ・カルバーノの『Invisible Cities』のようなポストモダンのたぐいまれな不朽の名作を彷彿とさせる。また、独特の穏やかであいまいな文体にもかかわらず、軽妙な風刺もちくりちくりときかせてみせる。たとえば、小さな王子様に対して人制で(あるいは一少年制というべき?)裁判を行えと命じる王様のセリフ。

「わしはわしの星のどこかに1匹の老いぼれネズミがいると信じるに足る理由があるのじゃ。わしは夜、奴が泣いとるのを耳にしているからの。お主はその老いぼれネズミに審判を下すのじゃ。ときどき、お主は奴に死刑の宣告をすることになろう。そうすると、奴の命はお主の審判にかかってくることになる。しかし、お主は、経済上の問題で毎回奴を赦免しなくてはならぬ。なにしろ、この星にいるたった1匹のネズミじゃからの」

こんな調子でほかにも、ビジネスマン、地理学者、街灯点灯夫など、「大人」という人間の無益さの隠喩である人物がからかわれている。
彼の物語は、悲しみと孤独をぎりぎりいっぱいまで表現した非常に繊細な物語であり、ピーターパン風の甘ったるい物語のトーンは影すら見えない。…反面、彼のこのような繊細な文体は翻訳者にとってはまさに頭痛の種であり、1943年の翻訳版では、翻訳者のキャサリン・ウッズはときどき袋小路に迷い込んだらしく、やや不器用で説教がましいトーンの訳文に終わっている。幸いにも本書の訳者リチャード・ハワード(彼は1999年にStendhaの『The Charterhouse of Parma』でも素晴らしい仕事をしている)は、ごく簡素でシンプルな訳文によって成果を上げた。結果、この不滅の古典の、新しい改良版が誕生したといえる。さらに、オリジナルのアートワークがフル・カラー版に復元されているのもうれしい。
大人になる途中のある時点で我々は「ウィットがある人でいようとすると、嘘をつくことは多かれ少なかれ避けられない」ことに気づく。しかし、サンテグジュペリの描写はこのアイデアにごく自然に反論する。ウィットがあることとは、新鮮でユーモアがあり、そして真実に対して厳格であるということなのだ。この物語そのもののように。