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ウィトゲンシュタインのウィーン (平凡社ライブラリー)

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 平凡社
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【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:S.トゥールミン/著 A.ジャニク/著 藤村竜雄/訳 出版社名:平凡社 シリーズ名:平凡社ライブラリー 386 発行年月:2001年03月 関連キーワード:ウイトゲンシユタイン ノ ウイ-ン ヘイボンシヤ ライブラリ- 386 ういとげんしゆたいん の うい-ん へいぼんしや らいぶらり- 386、 ヘイボンシヤ 7600 へいぼんしや 7600、 ヘイボンシヤ 7600 へいぼんしや 7600 世紀末ウィーンの文化状況の中で結晶した「ある決定的な問題」とは?そしてそれは哲学者ウィトゲンシュタインの生涯に、いかに貫流したのか?英米分析哲学の文脈でとらえられがちなウィトゲンシュタインの哲学を、故郷ウィーンの文化史・思想史に定位させた、現代のマスターピース。 第1章 序論-問題と方法第2章 ハプスブルク朝ウィーン-逆説の都第3章 言語と社会-カール・クラウスとウィーン最期の日々第4章 文化と批判-社会批評と芸術表現の限界
鮮やかに描かれる、世紀末ウィーンの知的風土 ★★★★☆
この本が出るまで、ウィトゲンシュタインは論理実証主義もしくは日常言語学派の関わりで読まれてきた。つまり、英米哲学者としてのウィトゲンシュタインだった。この本は、その潮流に抗して、ウィトゲンシュタインを彼が育った19世紀末ウィーンに送り返す。その知的背景の中で、ウィトゲンシュタインの哲学的問題、著作のスタイル、奇妙な生き様の意義を解明していく。

本書はウィトゲンシュタインの著作を読み解くのではない。その背景にある、19世紀末ウィーンの知的風土を描くものだ。論じられる範囲は、思想から始まり、社会評論、文学、音楽、建築、絵画、物理学にまで及ぶ。非常に広い知見だ。それらの知見から、ウィーンの知的風土を描き出していく様は、見事である。

まず後期ハプスブルク朝ウィーンの社会風景が描かれるところから始まる。問題を先送りした政治体制と、人々に広まる退廃的空気、耽美主義。そこから、身を引き離そうとして模索する文化人たちが現れる。鍵となるのは、社会風刺家カール・クラウスだ。著者によれば、ウィトゲンシュタインはクラウス主義者なのである。同じように建築家ロース、音楽家シェーンベルク、作家ホーフマンスタールが論じられる。

ついでウィトゲンシュタインにとって、なぜ言語がまず重要であったのかが解明される。鍵は思想家フリッツ・マウトナー、そして物理学者マッハである。ウィトゲンシュタインは彼らのなした言語批判を批判する形で、自らを形作っていく。ここで彼の前期の主要概念「論理空間」が、ヘルツとボルツマンに求められている。ここは大きく興味を引かれる論点だった。(ただし、現実そのものではなく現実の可能性を示す数学的モデルというアイデアであれば、同時期の非ユークリッド幾何学に関する論争が扱われるべきだろう。本書にはなぜか、数学についての話題が欠如している。)

これにショーペンハウアー、キルケゴール、トルストイに見られる自然科学的理性と倫理の厳密な分離が加わる。カントを徹底させたこの区分は、倫理を理性的に語ることのできる領域から区別する。こうして、『論理哲学論考』の問題圏が開かれる。

以降は、後期ウィトゲンシュタインも依然として世紀末ウィーンの知的風土の中にあったことが語られる。そして、ウィトゲンシュタインがなぜ誤解されたかについて語られる。結局、ウィトゲンシュタインは第一次世界大戦前の問題意識でもって、戦後の人たちに語りかけていたのだ。だから、誤解されるのも故無きことではないのである。

もちろん、文化の一般的風景を描いていく本書は、個々の話題については深く掘り下げない。当該の話題に詳しい人が読むと、やや浅い記述と感じる箇所もあるだろう。しかし本書が描くウィーンの知的風土はきわめて鮮やかである。本書を読む人は、当時の人々がどんな問題意識を持ち、何と格闘していたのか、ありありと感じることができるだろう。そしてこれは、単なる歴史の一幕ではない。著者たちが言うように、世紀末ウィーンの風景は一つの極端な例であって、その要素は我々の現代にもある。どことなく退廃的な空気が流れる今の世界において何をどう考えていけばいいのか、得られるヒントも大きいのである。
いい本です。 ★★★★★
ウィトゲンシュタインを世紀末ウィーンの文化史の文脈で捉えた労作です。個々の哲学的問題についての突っ込んだ議論なんかはありませんが、ウィトゲンシュタインと彼を取り巻く当時の思想状況の雰囲気が伝わってきます。
何となくウィトゲンシュタインが身近に感じられてきます。
倫理の人ウィトゲンシュタイン ★★★★★
ウィトゲンシュタインを中心に据え、後期ハプスブルク朝ウィーンの文化を描いた名著。欺瞞に彩られた社会の中でウィトゲンシュタインを始めとした文化人たちがどう欺瞞に立ち向かったのか、が鮮やかに描き出されている。理性の限界を明らかにして倫理を保護しようとしたウィトゲンシュタインの試みの根拠が後期ハプスブルク朝ウィーンにあったことが良くわかる。