素敵でした〜!
★★★★★
一輪の花で心の窓が開かれてしまうことを「一華開発」という(本文より)そうだが、彼の花を見て、胸のすくような思いを久しぶりに味わった。花を知り尽くした人に生けられた花は軽々と次元を超え、光線を放ち、魂に直接アクセスしてくる。まるで一本の木から神聖な仏像が彫られるように、花も彼の手によってその花自身も気付かなかった本質が見えてくるかのようだ。
「花から 器から 場から 習う」という3部構成。四季の花手帖 今様花伝書以来いつ出るのかと楽しみにしていた一冊である。
オブジェのように佇む霊芝あり、風という動き出しそうな器に乗って歌いだす椿あり。時代を潜り抜けた蓮弁を器にぴかっとピュアな白い桜も居た。素敵な古代の皮袋に生けられた実ものも。(それからいつも一品あぁ彼は温泉好きに違いないと思う作品もまたあった。)印象に残った花はきりがない。
これほど花を生かす器選びのうまい人って他にいるだろうか。とにかく花も器も(場も)素敵である。一時に集まってこんな風に扱って貰えたら本望だろう。わかっている上で崩すことのできる真の自由さ豊かさを感じる。
作品は彼の手を離れ見る人には見る人の心を映す 単なる花以上の花の本である。ふと気付くと時間が過ぎていた。気になった作品と対話した後壊れそうだった何かが修復され繋がっていた。そんな気がした。実用書としても役立つ知識が沢山載っている贅沢な一冊だ。また大切な本になりそうだ。