大西順子の復帰後第2作にしてユニバーサル移籍第1弾。『バロック』とは歪んだ宝石,真珠を意味するらしいが,そのタイトル通り米ジャズ界屈指の豪傑たちを従え,歪んだ美の真骨頂ともいえるチャールス・ミンガス色のほとばしる,時に野蛮,時に甘美な密度の濃いジャズを展開。新生大西順子の完全復活を強く印象づける濃厚な1枚。(JAZZ JAPAN Vol.1 三森 隆文)
わくわくします
★★★★☆
カムバック後間もない時期に門司港でのジャズ・コンで聴いたときは「アレ?」と思ったものでした。ところが、その1ヵ月後のクラブライブ盤ではすっかり復調してるではありませんか。
この作品は期待通りです。ただ、安心感まで出ているので、最近の若いピアニストの作品と同じ様には体が揺れません。でも、買いです。
大西流バロック音楽としてのJAZZ
★★★★★
聴き込む程に豊穣な印象を残すカラフル且つ現代の風を孕んだJAZZで、
各楽器の音も生々しく、しかもバランス良く録れている。
得てしてテクニックに溺れ、小難しい隘路に陥りがちな若手が多い中で、
脂が乗り切っている気心の知れた連中が、綿密な作り込みをしながらも
歌うべき時に歌い、さり気なく小洒落た技を織り交ぜながら綴る音絵巻は
流麗で長尺の曲でも聴いていて飽きさせない(これはなかなか得難い)。
通奏低音として屋台骨を支えるBassとDrumsの手堅い演奏の上に
3管それぞれの音色の特徴やフレーズ・テンポの対比を重ね、その合間を
時に自由に舞い、時に周囲を更に煽りつつドライヴするPianoは圧巻で
Verveに移籍した第1弾で完全復活と現代JAZZシーンのポールポジションに踊り出た
ことを高らかに宣言しているかのようだ。(よくぞ帰ってきてくれた!)
爽快な勢いとビタースウィートで円やかな深みもあって実にリッチな甲種推薦盤。
一番冴えるべき大西が冴えない(耳障りな同音連打が目立つ)国内盤は高すぎるので、星1個にさせてもらいます。
★☆☆☆☆
3曲目の「The Threepenny Opera」は3つのテーマがある。最初はブルース、二つ目はアップテンポのテーマ、最後は Jaki Byard という人のスコアに基づく大西のピアノソロ(様々な旋律に基づくカデンツァ)。だが、肝心の大西のピアノソロが冴えない。
最後から2曲目の The Street Beat / 52nd Street Theme になって、やっと昔の大西を思わせる調子良い演奏が聴ける。
たとえば、クラシックのピア二ストのマルタ・アルゲリッチが伴奏者に回っても、彼女のカリスマ性と強烈な個性が、他の演奏者を触発し発奮させることがあるが、大西のバロックにはそれがない。それでも、サイドマンたちが頑張っているのは、大西の実力ゆえというより、大西以外の誰かがリードを取っているからではないかと思える。
ーーー
The Threepenny Opera のピアノソロは、単なる Jaki Byard (Eric Dolphy の Far Cry でピアノを弾いている人。Mrs. Parker of K.C の作曲者)へのオマージュとして、おまけとして演奏されているのか(?)。Threepenny に挿入されたピアノソロは大西の「逸脱である」と、彼女に共感をもってそれを評価するなら、そのピアノソロに良い評価をすることができるかも知れない。が、The Threepenny Opera は、このアルバムのメインであるし ... たとえ Threepenny のピアノソロに目をつぶるとしても、とにかく、このアルバムにおける彼女のプレイは、総じて切れがなく、冴えない。
ホーン奏者と大西の共演に向井滋春との共演があるが、私は、向井との共演に比して、大西の「バロック」に、大西の衰えを感じた。その衰えを具体的に言えば、たとえば、復帰後の大西のフレーズには耳障りな同音連打(ドドドドドーとか)が増えた(目立つ)ような気がする【注】。大西も「鉄人」ではない。衰えるのは当然。だが、ピアニストは、衰えても、すごい演奏をする人は沢山いる。
The Street Beat / 52nd Street Theme で良い演奏をしているのだから、他の曲も良い演奏ができたはず・・・。彼女は、The Street Beat / 52nd Street Theme みたいな軽いバップ風の曲がうまい。あと "Flamingo" のピアノソロと "Memories of You" も良い(結局最後の3曲だけが良い)。しかし、それ以外のチャレンジについては、彼女のプレイは総じて冴えない。彼女は失敗していると思う。このアルバムは、全曲を通して聴くと退屈する。
【注】
縦横無尽なフレーズで弾きまくるのが魅力の大西が、<1> 5'58, 6'15 <2> 4'11, 4'21 <5> 7'10 で「同音反復(同音連打)」を繰り返すのは鼻につく。「楽興の時 / Musical Moments」では、<8> の 1'39, 1'53。それら「同音反復」はいずれも、彼女の身についた悪い癖、技巧の衰えだと思う。
祝 完全復帰
★★★★☆
非常に意欲的な作品である。
残念なのは録音が悪いこと。
CD発売の記念ライブでは、トリオでスルベニ・オペラまで演奏してくれた。
CDでは、引っ込み気味のピアノも、ライブでは彼女独特のコツンとした音を
響かせてくれた。
CDでは、ラッパが多くて雑然とした曲に聞こえた曲も、ピアノトリオで聴くと
計算しつくされた曲の構造が浮かびあがり面白かった。
2年位前の銀座のライブでは元気がなかったが、今回のライブでは弾けていました。
祝 完全復帰!!ライブで☆一つプラス。
Welcome Back!
★★★★★
レコーディング復帰2作目で、2010年録音。
前作のトリオ盤があまり印象に残らず、どうかなと思っていたのですがこれは傑作です。
メンバーはR.ヴィール、R.ウィッテカー(b基本的に2ベース)、H.ライリー(ds)、J.カーター(reeds)、N.ペイトン(tp)W.ゴードン(tb)とスーパーヘビー級の面々。
内容は(エリントン)→C.ミンガス→W.マルサリスの音楽の流れを汲むど真ん中のメインストリーム・ジャズ。
大西さんのピアノはソロのみならず、バックでもH.シルバーの様に絶えずゴリゴリと動き、2ベースと相俟って濁ってスイング、個性の固まりかつ音圧命のフロント陣はゴツゴツとぶつかり合ってうなる。癒し・おしゃれ・ライト等の言葉と全く無縁のリアルなジャズとしか言いようのない音楽が初っ端から繰り広げられます。個々のミュージシャンの個性と、舐められることなくそれらを束ね、明確な意思を持って表現するリーダーなくしては存在しない音楽です。大西さんはより上の世代のジャズ・ミュージシャン(出身地を問わず)の持っていた佇まい(何をどうやろうがジャズになってしまう)を受け継ぐ稀有な人であり、今後も継続して活動されること切に希望します。
なお、蜷川実花さんの撮られたインナーのフォトは実は胸元まであり、目元ばっちりメイクと相俟ってなかなかセクスィーです。広告ページ等探してみてください。