だが、それを除けば、何ともすばらしいことに、本作にはまさにベスト・トラックが選曲されている。「Changeling」が未収録というささいな文句を別にすれば、このベスト盤はシンプル・マインズの曲をヒットチャートでの成績どおりに公平に評価している。このバンドのひどくオーバーな表現や騒々しさはしばしば厳しく非難されるが、『Sparkle In The Rain』以降の多くのトラックにある親しみやすさを聴けば、バンドが合理的なサウンドになじんでいることは明らかだ。
たとえば、壮大な決意表明である「Mandela Day」のサウンドは、大いなる誠実さと興奮を感じさせるが、たったの3コードでできている。また、「Waterfront」の早弾きのベースラインは、4分以上も同じ音が繰り返される(参考のために言うと、この音は「D」だ)。
すてきなポップ・シングル――「She's A River」「Alive And Kicking」「Up On The Catwalk」「Promised You A Miracle」は初期のスパンダー・バレエと同じスタイルの曲だ――は別として、シンプル・マインズの成長において何より興味深いのは、さらなる成功が始まったのが、ロキシー・ミュージックのまねをやめ、結果的にブライアン・フェリーがレコーディングする時間がなかった歌、すなわちキース・フォーシイ作の「Don't You Forget About Me」で思わぬ大ヒットを飛ばしてからだという事実だ。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)