Listener Supported [DVD] [Import]
価格: ¥828
ミレニアムの変わり目は、白人のむちゃくちゃなラッパーや、グラビア向きのティーンエイジャーのポップ歌手、ミュージカル・アニメが一挙に現れた合流点として記憶されるかもしれないが、デイヴ・マシューズ・バンド(以下DMB)はそんな流れにかたくなに逆らい、熱狂的なファンを魅了し続けている。本作品に収められた最高のコンサートは、公共TV局向けにプロデュースされたものだが、忠実なファンにとってのライヴの記念にも、またDMBの恐るべき音楽的才能を紹介するのに役立つ内容にもなっている。彼らの歌が嫌いだとしても、母国を離れた「国外居住者」でバンド名にもなっている南アフリカ人デイヴ・マシューズが舞台中央で歌う様子が嫌いだとしても、縦横無尽な演奏を繰り広げるバンド全体のパワーに文句をつけるのは至難の業だ。マシューズのブルージーでポップな歌の中に、ジャズ、フォーク、ワールドミュージックが実に見事に織り交ぜられているからだ。
2時間を越えるライブは、マシューズのおなじみのオリジナルソング(「クラッシュ・イントゥ・ミー」「トゥー・マッチ」)からカヴァーソング(チーフタンズの「ロング・ブラック・ヴェイル」ボブ・ディランの「見張り塔からずっと」)まで18曲を収めている。サックスとバイオリンが、楽器全体の音の立ち上がりに活気をつけ、力強いバックコーラスがマシューズの骨太の歌声を甘く響かせるので、DMBは芝居がかった仕掛けに頼る必要はない。体力ぎりぎりなのは隠せないものの、だからこそ熱狂的なファンの声援をあおりもする長いジャムセッションにこそ、DMBのドラマ性は存在している。監督、編集は洗練された自由なタッチで、すぐれたレコーディングとミキシングは彼らのライブアルバムが続々とリリースされるのがうなずける出来になっている。DMBにとってもファンにとっても、演奏こそがいちばん大切なものであり、DMBが最初から最後まで出し惜しみせずにすばらしい演奏を披露しているのは間違いない。(Sam Sutherland, Amazon.com)