これは面白い!
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橋本治の新書で「ちゃんと話すための敬語の本」という本がある。驚いたことにそこで言われている内容が、より精緻な形で詳述されている。しかも歴代の文法学者達が日本語の敬語という現象をどのように考えていたのかという議論と社会学的考察を交えて読者をグイグイと引き込んでしまう。
つまり、著者の主張は橋本治が前述の本の中で主張しているのと同様に、敬語の本質は相手と距離を置くこと、敬語を使用する相手を「自分達のソトの人間」として遠ざけ,敬語を使用しない相手を「自分達と同類の人物」として取り込むというものである。相手に対して距離をとることを「ネガティブ・ポライトネス」といい、相手との親密性を涵養するために距離を縮める言語行為を「ポジティブ・ポライトネス」と呼ぶ。こうしたポライトネスは人類にとって普遍的な対人行動であり敬語はその位相の中で出現している現象であるとともに、一部で「変な日本語」と言われているコトバもポライトネスの視点で考えると納得してしまう。ポライトネスという概念に今まで無知であったことをもったいないことをした、と感じる一方で久々に知的興奮を感じた日々を味わえたことに満足している。