真実の追究はまだまだ続く
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軽妙洒脱な文章で、多くの人が興味を持つ相対性理論や量子理論の世界を交えながら、直近の物理学の世界を垣間見せてくれました。
また、「聖典は科学と比較すると見劣りがする」と言う主張には、全面的に賛同しないまでも、現状に満足せず、より真実の世界に近づこうとする科学者としての心意気を感じることができました。
単なる相対性理論ファンの私には、内容の理解は難しかったのですが、それでも原子のなかでおこっていることのイメージを持つことはできました。
純粋文系には確かに難しい。が、結局言わんとすることは分かる気もする良い一冊です。
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純粋文系でありながら、森羅万象の理由を知りたがる
ありがちなゼネラリスト志向の自分ですが、
この本はいろいろ驚くべき事を教えてくれました。
勿論、難しいです。
でも、何回か読めば何となく見えてくるような気がします。
この本が扱うのは、主に「質量の起源」の問題。
原子が陽子、中性子、電子から出来ていることはさすがに知っています。
そして、原子の質量の99.9パーセント以上は、
陽子、中性子の質量による。ここまでも知っています。
また、現在の考え方では、陽子、中性子も、クオーク3つとグルーオンというモノから
成っている、ということも聞いています。
では、結局は、陽子、中性子の重さ(質量)は、クオークとグルーオンの重さ(質量)の総和、
ということだと思っていましたが、
なんと、この本によれば、
グルーオンには重さ(質量)はなく、クオークの重さ(質量)は3つ合わせても、
陽子、中性子が持っている重さ(質量)の1パーセントしかない!のだそうです。
では、では、陽子、中性子の重さ(質量)は、何から生じているのか???
この本の提示する答えは実にあっけないモノです。
それは、恐らくは、純粋文系の方でも、幾らかこの手の話に関心をお持ちの方なら
概念は理解できる程度のモノです。
そしてこの本は、そのあっけない結論のみのために多大な伏線を張り巡らせた一冊とも言えます。
でも、その余の雑知識が良い味を出していますので、読んで損した気持ちには絶対になりません。
ただ、この題名だけは「ちょっと違うんでないの」、と言わせていただきたい。
勿論、源著者一流の洒落がベースなんですけどね…
末尾に私のような純粋文系の方でもこの本を楽しむためにまず読んでおいて損のない本のご紹介を。
「量子論」を楽しむ本―ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる! (PHP文庫)
光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学
普通の物質の質量の95%分の起源が興奮を持って語られてます
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クオークの漸近的自由の発見でノーベル物理学賞を受賞したイタリア
系の血をひく著者が、普通の物質の質量の95%を説明すると宣言して
「手ぶりを交えながらの説明」を実行しています。読んでいくうちに
このような書き手の興奮が伝わってきて巻き込まれていくような本
です。内容は陽子の質量がクオーク3個の質量を足しただけで
は5%分しかないことをきっかけに、残り95%分の質量の原因を素粒子
物理学の大切な概念である対称性、漸近的自由、粒子をとりまく雲等
々をイメージ豊かに駆使して説明しています。題名から質量の起源の
話だろうと推測できる人はヒッグス機構の話を期待して本書を手にと
るかと思いますが、私はそうだったのですが、その点に関しては肩す
かしを食らった感じです。というのは著者のスタンスとしてはヒッグ
ス機構による質量の説明は5%の部分だからです。そんな気持ちで読ん
でいても著者の意気込みと人となりに飲み込まれてしまいます。例え
ば、1)対称性を「差異なき区別」という言葉に言い換えて、クオー
クだけではそれを達成できないことをイメージさせ、その辻褄合わせ
にグルーオンという粒子の存在が必然であるということを納得させる
書きっぷり、2)重力が他の力と比べてとんでもなく弱いことに関し
て、その原因として問うべきことが陽子はどうしてこんなに軽いのか
ということであると読者に気付かせその軽さをもたらす仕組みの語り
っぷり等々は是非手にとって読まれることをお勧めします。
クオーク理論を主張していたゲルマンがファインマンの言うパートン
をプットン(ごまか子)と言って揶揄していたころ、著者は学生だっ
たのですがゲルマンの部屋を訪れたとき「君は何を研究しているのか」
と聞かれ、わざと「パートン模型の改良です」と返事をしたときのて
んまつも本人の話としてたっぷりの情景を伴って語られています。