大事なのは作品との対話
★★★★★
そもそもアートとは何?からはじまり、子どもがアート作品をどう見ているかを通して、知識の押し付けによる弊害や、教育のあり方について考えさせられる良著です。
著者は一貫して、難しい専門知識を必要とする「学問」としてのアートを、皮肉的なジョークを交えながら綴っていて、読んでいて痛快です。そして、思考やコミュニケーションの大切さについて述べています。
教育者のみならず、美術に深い知識がない方でも楽しく読めます。学者肌の方にはおすすめしません。
一般の大人、特に小さな子どものいる人が一読されると、子育てや教育の参考になるのではないでしょうか。
翻訳の質もなかなかよいと思います。
感性を失わないように
★★★★☆
一つ一つが分かりやすく、優しい表現でどんな方でも入りやすい本だと思います。学芸員等の深い経験からの、感性を大切にした内容は非常に好感が持てます。深い内容についてはあまり触れませんが、一つの入門書的に考えるとこのくらいの内容かと思います。
特に小さな子供がいる親が読んだら、大いに教育に役立てるのかもしれません。親子だけでなく、一般教育の場でも新鮮な光を注いでくれるのかも。アートとは、感性とは・・そういったシンプルな大切さを考えることの出来る本だと思います。
一般鑑賞者の視点を大切にしている貴重な本
★★★★☆
かつてニューヨーク近代美術館(MoMA)で働いた経験のあるアメリア・アレナスさんは、98年に『なぜ、これがアートなの?』を日本の読者向けに出版。それ以来、鑑賞教育に関する入門書を書き続けている。ただ彼女については、その活気のあるギャラリートークを抜きにして語ることはできない。同じ『なぜ、これがアートなの?』というタイトルの展覧会でそのトークの手法が紹介されたほか、彼女が主演するビデオも発売されている。本書は、そのような著者がこれまで考えてきたことや学んできたことをまとめたもの。「芸術はよろこびのためにある」という基本的な観点から、美術史中心の現在の美術館に批判的だ。そして、「初心者には美術史の知識は無用」とまで言っている。そんな彼女の発想はラディカルで新鮮だが、他分野に渡る重要な問題を一気に論じているため、全体にややまとまりに欠けているし、細部では説明不足などによって誤解を招く面もあるかも知れない。しかし、専門家でない一般の鑑賞者にとって大事な問題を、美術館側でなく鑑賞者の立場から分かりやすく論じた本は他にあまり例がなく、とても貴重な試みだと思う。