タイは熱帯だからヒーターなしでも熱帯魚が飼える。金魚と一緒なくらい気軽に、実際金魚と一緒に飼われたりもしている。別に熱帯魚のマニアでないが、どこぞの魚はなんという種類か気になるときにも役に立つし、これから飼おうという人には特にお奨め。また、熱帯魚を飼う予定など全然ない人にも、この図鑑を眺めているだけでも、癒しと雑学がえられる。

　たとえば、水槽でなくビンに1匹ずつ分けられて売られている、あの派手なグッピーの親分みたいな魚は、ベタというそうである。「闘魚」という博打に使われるのもいる、というか、タイでは絶対そっちが中心だ。闘魚用に品種改良されたのはプラカット、よりタイ語に近くつづればプラー・ガット。「噛み付く魚」という意味だ。観賞用のものは日本ではタイベタ(又はトラディショナルベタ）。更にタイベタから選抜育種されたものがショーベタという、ひれが大きく色も艶やかでミスユニバースのドレスのような品種である。かの英国首相のチャーチル氏もベタの愛好家だったそうだが、鑑賞していたのか闘わせていたのかが気になる。

　ベタは、あの名前くらいは聞いたことのあろうキノボリウオの仲間であり、グッピーとは親戚筋ではなかった。本家のキノボリウオは本名アナバスという。ところが看板に偽りあり！木には登れないのだ！浅瀬を胸びれで移動できる程度で、えらが湿っていれば空気から直接呼吸ができる。それだけ。少々がっかり。

　魚を愛する人々が作った図鑑だけあって、他ではお目にかかれない素敵な表現もあった。カイヤンという魚の写真のキャプション。

「サメのように精悍なナマズ。しかし餌をあたえすぎると、ふくらんだフグのように太ってしまう。」

どんなナマズだか実物がみたくなる。1.5ｍにたっするというメコンの大ナマズ、プラー・ルムも親戚だそうだ。メコンの大ナマズも太ればフグのように丸くなるのだろうか。すごそう！