舞台は、1932年のアメリカ南部某州にある小さな「死刑囚舎房」。グリーン・マイルとは、死刑囚が「オールド・スパーキー」(電気イス)にたどりつくまでに歩く、「薄汚い緑のリノリウム」の通路のことだ。本書の魅力的な語り手は、以前そこで死刑囚の看守主任をしていた老人で、何十年も前のことをふりかえる形で話が進んでいく。
ひょっとすると、あまりにもできすぎた話かもしれない(死刑囚舎房には、ミスター・ジングルズという名前の賢いねずみが登場する)。それに少しばかり哀感がにじみすぎているかもしれない。しかし、多彩な登場人物やこの超自然的な物語の不思議さには、抗しがたい魅力がある。スティーヴン・キングのどこがいいのかわからない、と今まで敬遠してきた人たちにもおすすめできる1冊だ。そういった気むずかしがり屋でも、徹底的に残酷なシーン(「オールド・スパーキー」の場面も含めて)を簡単に読みとばすことができるからだ。
『The Green Mile』は、1997年度ブラム・ストーカー賞の小説部門で最優秀賞を受賞。トム・ハンクス主演の同名の映画は、『ショーシャンクの空に』(キングの作品集『Different Seasons』から映画化)と同じく、フランク・ダラボンによる監督作品。