内容:
・表題エッセイの書き下ろし
・過去誌面に掲載されたエッセイ
書き下ろしエッセイへの感想:
・恥を承知で過去の遍歴を書いた勇気を見習いたい
・失敗は繰り返したが、その経験を作家として活かしたのだから―少なくとも―もはやそれまでの失敗は失敗とは言えなくなったと考える
誌面エッセイへの感想:
・「ネット…」の痛快さが白眉。その後どんな話をしたのか、詮索は野暮か
著者である山本氏は現在の幸せなご家庭を気づかれる前に、自らの軽率な言動で、著者自身すら苦しくなるような状況を作ってしまった。 そのときの苦しさ、切なさ、自分に対する情けなさ不甲斐なさを強くお感じになったのだろう。
直木賞受賞したことにより、過去にご自身が苦しい思いをさせた方々へ、今の自分の想いや心の底からの詫びたい気持ちを伝えたかったのだろう。 また一方で、作家として成功を収めるまでの間、現在のご家族によって支えてもらったことや辛抱してくれたことへの感謝の気持ちを表したかったのだと思う。
本書は、そんな著者の気持ちを伝えたいために書かれた、「私書」なのではないかと感じた。 世の中にあるのは、順風満帆な人生や偽りのない人生だけではない。 人を偽ってしまったことへの慙愧の念は、そうそう単純には払えないものではないか。
いかなるきっかけであったとしても、著者の勇気ある告白と家族への愛情は讃えられるべきことと思う。