“くれない症候群”は卒業しよう
★★★☆☆
ミドル層(35歳〜41歳)のマネージメント力低下の実態と、それに対する
対策を提言する書。著者は最初に語ります、ミドル層の弱体化の原因は、
それを嘆いている現在のマネージメント層であり、嘆いてばかりでも出口
はないと。著者の考える、ミドルマネージメントが抱える最大の問題点は
OJTの欠如と教える経験の乏しさ。それを補う為には、人が育つための修羅
場体験の場を意図的に増やしていくしかないことを丁寧に解説してくれま
す。
なるほどと思ったのは、「人事評価の客観的な指標はない」という視点。
その理由は、「プロフェッショナルワークを評価できるのはプロフェッシ
ョナルだけ」だし、「一回一回全部業務内容が違っているのに、客観的な
指標はつくれない」とのこと。ムリに数値化しようとしない、潔い姿勢に
は好感が持てました。
そして、一番参考となったのは、伊藤忠・丹羽宇一郎会長の二つの視点。
「ミドルマネージメントの質が落ちたのではなく数が少ないだけ」
「“くれない症候群”で自分ではリスクをとらない姿勢では仕事は進まない」
日頃の仕事に追われまくって疲れている中堅層にお勧めの本です。
ミドルが日本を救う
★★★★★
中堅崩壊と危機感を煽るようなタイトルに反して、意図はちっちぇえ文字で書いてある「ミドルマネジメント再生への提言」である。読むと逆に元気が出る。
この本のミドルの定義は、今現在のバブル期入社世代。右肩上がりの最後の世代のことである。崩壊した中堅とは、バブル入社世代までが入社時に見ることができた、あこがれの上司である。今は、組織のフラット化と成果主義の影響で、そのようなかつての中堅はいなくなってしまった。
大切なのは、犯人(もう引退した人切り実施組)探しではなく、今何をすべきかである。現場を支えるミドルをどう育てるか。そして、ミドルはどうあるべきかである。ミドル層が実力を発揮しなければ、会社も日本も成り立たない。
プレイングマネージャになっているミドルは、少ない教育機会・経験ながら、会社からは利益確保や部下育成、コンプライアンス、イノベーションを求められる多重債務者である。しかし、調査すると少人数の部下を持つプレイングマネージャは、総じてやる気も仕事へのコミットメントもある。ただただ忙しすぎるのだ。
提言として、リーダーとしての役割とマネジメントの役割を会社の実情に合わせて分担する制度が適切ではないかとしている。
ミドルにも,ジュニアにも、そしてシニアにもお勧め
★★★★★
“中堅崩壊”という厳しいタイトルから、疲弊するミドルを大量に生み出す日本企業の問題点をあげつらうような内容かと思いましたが、ミドル復権に向けた前向きな提言やヒントに満たされた、読んでいて元気の出る本です。
この本の中で、“ミドル”は大卒新人〜定年60歳までの期間を三等分した中間年齢層、すなわち35歳から47歳までを“ミドル”と定義しており、特に31歳〜41歳までの層を主な対象としています。採用方法や雇用形態が多様化している中で、年齢層で“ミドル”を定義することに異論もあると思いますが、今の日本企業において、この年齢層の人材をいかに活かしていくかは、人材の流動化が進む中で、逆に重要性が増すとも考えられます。野田氏の論点にうなづける点が多い背景も、こうした認識があるからではないでしょうか。
また、アンケート調査結果,企業トップからの視点,実際の企業の取り組み事例等々、提言に至る道筋も具体的に示されているのも、非常に納得感がありました。
エピローグでは以下のようなコメントで締めくくられています。
“サラリーマンをバカにしない社会を私はつくりたい。・・・働くことの本当の素晴らしさを・・・働いているお父さんたちそのものがわかっていない。そういう風潮をつくってしまったのは私たちシニアでありマスコミだ。・・・こうした風潮を変えることから始めたい。”
年齢的にも役割的にもシニアになった私には、耳に痛くもあり、勇気付けられる言葉でした。
良書です
★★★★☆
まだレビューが1件しか書き込まれていないのが残念なのですが、
良書だと思います。
分厚くて、みなさん手に取るまでに至らないのかもしれませんが、
内容はかなり充実しています。
ミドル1000人アンケート、伊藤忠の丹羽会長へのインタビュー、シャープ、リクルート、トヨタなどの先進事例など、贅沢な内容になっています。
著者の野田さんの講演などをお聞きしたこともあるのですが、
「社内プロジェティスタ」などこの方の主張はおもしろいです。
私自身はまだ「ミドル」の手前ですが、非常に勇気付けられるものがあります。
最後の「サラリーマンという職業にもっと光を当てるべき」はものすごく頷けます。
日本のミドルマネジメントの新しいあり方を力強く提言
★★★★☆
旧来の中間管理職から、変革を担う新しいプレーイングマネージャへの進化について、著者の専門領域でもある組織論の観点も含めた提言となっており、私自身もミドルの一人としてたいへん勇気付けられました。
組織のフラット化により、部下を持つことのなかった層が、課長というポストで始めて部下を持つことになり、先ず戸惑うのは、「どうやって部下の人材育成すればいいのか」や「求められるリーダーシップとは」ということでしょうが、著者はその疑問や不安に対して、シャープ、伊藤忠商事、リコーなどの先進事例も織り交ぜながら、具体的なイメージを提示してくれています。
「中堅崩壊」というタイトルはややセンセーショナルで、内容を正しく伝えきれていないのが残念ですが、30歳台後半から40歳台の自信を失いつつある世のミドルマネジメントに、多くの「気づき」を与える良書だと思います。