自己実現の本ではなく、処世術の本なのです
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●能なしは助言を与えたがる
●洗いざらい話さない
●言葉や知識は小出しにする……
など、右のページに短くて鋭いアドバイスがあり、左のページでその解説がのっています。
この当時の西欧社会の美徳である「余計なことは話さない」ことに重きをおいた、コミュニケーションの秘訣集です。ほぼ同時代のベンジャミン・フランクリンも「駄弁は弄するな」と言っていますが、こうした「話さないことの価値」は、現代人からすると、「あれっ?」と思うこともあるでしょう。
しかし、よくよく考えてみると、現代だって、「余計なことは話さない」ことの価値はあるかもしれません。
自己啓発書などで「自分の考えを伝えろ」などといった思考の発信圧力が高くなっているので、つい、「何か言わないと損なのではないか」と思ってしまいがちです。でも、長い目でみれば、やっぱり「何も言わないほうが得」だということは、かなりあり得る話です。
この本は、自己実現のための本ではなく、処世術についての本です。
――とすると、うまく世渡りりするためには、自己実現欲を抑えることが大事なのかもしれませんね。