卵加工品に関する入門書です
★★★★☆
本書は卵を割って(割卵)作った卵加工品を製造する視点から卵について書かれたものです。著者はいずれもキューピー(株)のOB又は職員です。キユーピー(株)はマヨネーズに卵黄(黄身)しか用いなかったので、自社で割卵して卵黄と卵白(白身)に分離した後、使用しない卵白を卵加工品として販売した我が国最初の企業です。これら卵加工品には、殻を割った液卵という製品や卵を乾燥(黄身又は白身)させたものなどがあり、私たちの身近にいろいろと使われていることがわかります。また、液卵を使用する製造者(菓子、卵製品)にとって、原料の液卵がどのように製造され、使用する液卵の選択や取り扱い上の注意点などわかりやすく記述されています。特に、近年の食中毒菌の原因とされているサルモネラ菌に関する記述は、卵加工品を取り扱う人に必要な最低限度の情報をコンパクトにまとめて記述しています。したがって、本書の対象は卵加工品の製造に携わる人ですが、内容がわかりやすく記述されているので、大学又は短大の食品関係学科に在籍する学生や、食品関係の行政機関の方にも役立つと思います。ただし、本書の内容は学術書よりはむしろ啓蒙書を指向していると思いますので、本書で取り上げられている各項目の詳細については、他の学術書で補う必要があります。本書はこの分野の入門書です。