見事な交通整理
★★★★☆
フェミニズムの揺籃期からポスト構造主義の現代まで、錯綜した身体に関する諸言説をジェンダー・スタディの立場からうまく交通整理し、読者に語ってくれる解説書です。遥か昔の私の高校時代、赤点レベルであった物理が、「親切な物理」という参考書で、一気に大学合格レベルに達したときと同じような感慨がありました。
ジェンダーのみならずセックスも作られ書き込まれたものであるという、バトラー以降の諸言説をも射程に置くならば、当然第4章「女の解剖学」も記述されなければならないのかもしれません。
全体を通して、随所で価値中立的な学術書であろうとする努力は認められますが、男性の必要以上のステレオタイプ化という綻びは避けえず、それから脱却したときに初めて星5つ付けられるのかなと感じました。
また第7章「子殺しの論理と倫理」は、本書のテーマからすると、かなり冗長な感じがします。