楽譜自体はピアソラタンゴファンにはおなじみの、
パブロ・シーグレルとエマニュエル・アックスの連弾の演奏に
依るものである。
よってピアソラ五重奏団の演奏には準じていない。
つまり、本楽譜は次のような工程を経て作成された楽譜である。
ピアソラ五重奏団の演奏
↓
パブロ・シーグレルとエマニュエル・アックスによる連弾への編曲
(以下、連弾への編曲)
↓
採譜をした山本京子氏による編曲
ピアソラファンの中には、五重奏団の演奏に依る楽譜を
望む人もいるだろう。
しかし「連弾への編曲」は非常にピアソラ的であり、
そこに、よりピアソラ的解説が加えられている点において、
ピアノに特化した編曲をすばらしい形で実現している。
よって「連弾への編曲」のCDを一度聴き、そのすばらしさを
堪能してほしい。そうすれば、同編曲については納得できるだろう。
問題は山本京子氏の編曲である。
本楽譜を演奏していると、
背筋にぞくっと悪寒を感じるパッセージがいくつかある。
楽譜を見た時点で違和感を感じたのだが、
絶対音感を持たない私は、実際弾いてみないと
その違和感の正体ははっきりと分からなかった。
その違和感の正体の一つは、装飾音の追加であった。
私は稚拙ながらも長年ピアソラに慣れ親しんでいる。
そして演奏上、装飾音の演奏については強く気を使っている。
ピアソラの音楽、特にピアノにおこすとなると、
その装飾音が非常に重要となってくる。
しかし、ピアソラなら入れないであろう箇所に、
不自然な装飾音が挿入されている箇所があり、
私はその一節が非常に気持ち悪く感じられた。
編曲自体は、とてもよくできているので、
演奏の際自分で適宜編曲をすることが良いと思われる。
しかしこれがまた一筋縄にはいかないのだが。