ドビュッシーなどの近現代フランスのピアノ曲は、運指やペダルの使い方については古典派やロマン派とは違うところが多く、原典版にあたるデュラン版はドビュッシーを弾くのに多くのピアニスト達（特に海外）が使っていますが、ミスプリが多く大変苦労しているのも事実です。

日本では、安川加寿子版、井口基成版、中井正子版などの校訂版があります。昔は日本から出ているものは主に安川版を使っていた人が多いと思います（今でも、使えるというピアニストは少なくないのも事実です）。この曲集は今でも最も信頼できるデュラン版を底本に編集した楽譜です。

中井版ではフランス語の楽語に日本語訳がついてあります（安川版でも日本語訳がありますが、別ページに解説されていて、参照するのが面倒です）。運指は安川版の独特なものに対して中井版では一般法で書かれており、一般人でも無理なく演奏できます。ペダリングについてはダンパー・ペダルだけではなく弱音ペダルについての記号が詳しく書かれており、大変参考になります。ドビュッシー初心者でも大きな助けになるでしょう。子供の領分はソナチネ程度の実力があれば弾けると思います。現代人のためのドビュッシーの楽譜といってもいいでしょう。