All the Roadrunning
価格: ¥979
この7年間に渡って、マーク・ノップラーとエミルー・ハリスは"スタジオでの時間から貴重な数時間を時折"こっそりと作ってアルバムを静かにレコーディングしてきた。そしてこの元ダイアー・ストレイツのシンガー兼ギタリストはそのアルバムを発表した。2人がアルバムについてほとんどを秘密にしていたのは賢明だった。期待が雲を突き抜けるほど膨らんでいただろうからだ。ノップラーが12曲中の10曲を手がけ、ハリスも強力な曲を書いてはいるが数は少なく、たったの2曲しか手がけていないとなればなおさらだ(「Love and Happiness」と「Belle Starr」)。だがここにこうして披露された『All the Roadrunning』は、美しくはあるが、どこか失望させられる出来で、真に中心となるものがない。この2人の有名なこれまでの作品に親しみのある人ならば、詩的で陰りのある曲目や、ハリスのこの世のものとも思えないソプラノがノップラーのダークな抗うつ剤的な低音に光を加えることを期待するだろう。だが驚くことに、このアルバムはあまりにもおとなしく、ミッドテンポのグルーヴが一度も破られることはないし、大きく弾けることも一度もない。そうは言っても、好ましい曲もある。夫婦のスクラップブック的なドタバタを描いた「This Is Us」、ブルージーなせめぎあいの「Right Now」、9.11がインスパイアした胸を締めつけられるように痛ましいバラード「If This Is Goodbye」。うっとりさせるギタリストだったノップラーは、ぞくぞくさせるようなおどけた端的なヴォーカルを聞かせ、ハリスは初期作品の手に負えない活発さを「Belle Starr」に持ち込んだ。だがやはり、もの悲しさで有名な2人のミュージシャンが共に歌ったデビュー・アルバムとしては物足りない。時にはとても印象に残る部分もあるのだが。--Alanna Nash