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ジェイムズ・ジョイス伝〈1〉

価格: ¥1,966
カテゴリ: 単行本
ブランド: みすず書房
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ジョイスの生涯を追う ★★★★★
ジョイスは、子供時代の裕福な生活から、父の破産を通じて、生涯に亘り裕福とは無縁であった。
二十世紀イギリス文学の中で、否、アイルランド文学と言い替えても好いが、その中で、常に表現の冒険を為さしめた意図は、どこに有ったのであろうか?若き芸術家の肖像、ダブリナーズ、フィネガンの通夜、膨大な著作を残した訳では無いが、その著作はいつも問題を起こしかねない物であった。ダブリン市民に至っては、ダブリンの彼らに激しい怒りを起した作品でもあった。ジョイスの、アイデンティテイはケルト人としてアイルランドに終生あったのである。

パリ、チューリッヒ、トリエステ、若き日にダブリンを出て、国外でベルリッツの外国語教師として過ごしたジョイスであったが、作品の舞台は、アイルランド、且つ、ダブリンである。彼にとり、故郷は、良きに付け悪きに付け、いつも意識の中心にあったと云う事であろう。然し、これだけの文学に深い影響を与えた作家は、決して流行作家では無かったし、また富とも華美とも無縁であった。流行作家という物は、平均的読者のレベルに合っていなければ成らない。ジョイスやカフカ、ポー、ベケット、が流行作家に成るとは、到底思えない。世界文学の実験的牽引者は、決して何百万部も売れる流行作家になることはなかろう。

アイルランド文学が、この二十世紀の中で実らせた果実は、凄いものだ。足った百万人位の人口の中で、唖然とするほどの作家を輩出した国は、他に例が無い。文学では人は生活が出来ない、大学に職を求めるか、公務員にでもなる他、作家を続ける道は無いだろう。ゆえに、彼らは、皆、生活が困窮した。それは、文学の冒険者の宿命であり、また、運命でもあったであろう。ジョイスの伝記は、他にも有るに違いないが、みすず書房からでたこの伝記は、手にしやすい物である。