誰にも興味あるテーマでは
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電車が止まってしまいバイト先に遅刻した韓国人留学生。遅刻の理由を説明していたら、バイト先の店長が「言い訳ばかりで謝らんのか!」と一喝。こういう場合、韓国では理由がまっとうなものかどうかが大事なので、まずは説明しただけなのに…。会話や文章の組み立て方はその国によって違う。よくある「文化ギャップ」の光景だが、そこからコミュニケーションの背後にあるコンテキスト(文脈)の差が見えてくる。―
「異文化理解」というとなにやら堅苦しいが、要は自分と違う背景、文化の中で育った人とどうコミュニケーションしていくか、その心のノウハウみたいなもの(たぶん)。著者自身が日本語教員として留学生などに接する中で見聞きした数々のエピソードから、「異文化体験」の諸相を紹介、それがどういうメカニズムで起こってくるのか、どう乗り越えていくべきかなどが平易な語り口で解説されている。
心理学や社会学、教育学など、様々な領域にまたがる学説も丁寧にやさしくひもとかれている。私自身は日本語教師を目指す者ではないが、マイノリティの問題や子どもの発達、日本語教育の実践現場など、広く異文化コミュニケーションについてのコンパクトな入門書になっていて、とても興味深く、また面白く読めた。
留学生や外国人の友人のエピソードを語る著者の視線は、終始暖かい。
検定対策としてのみならず...
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専門書にありがち難解な用語解説ではなく、かといって単なる現場の体験談ではなく、異文化に触れた様々な立場の人々のナマの声とその背景にある問題点、研究の現状がわかりやすく結びつけられている。
多くの検定受験者が苦手意識をもつ、理論の提唱者や統計なども「覚える」というより、目の前の具体的な状況を「考えて」いくことにより、自然に身につけられるようになっている点は受験者にはありがたい。
また何気ないコミュニケーションの中から相手が持つ想いやそこに潜む問題点を見出していく筆者の視点は、日本語教育に携わる者のみならず、多文化共生の時代を生きる者すべてにとって大切なものを教えてくれる。
タイトルにこだわらず、幅広い読者層におすすめしたい一冊。