出てくる、出てくる、山のおばけに川のおばけ、海のおばけに町のおばけに家のおばけ、ゆうれいも合わせて総勢50以上のオンパレード。ぬりかべ、のっぺらぼう、あかなめ、ざしきわらし、あづきあらいなど、今ではもう消えかかっているなつかしい名前の数々。トイレの花子さんや、ひところ大流行した口裂け女も再登場。日本には昔からこんなにたくさんのおばけやゆうれいがいたのかと、あらためて驚かされる。
おばけとは、いったい何なのか。おばけはいるのかいないのか。おばけとゆうれいはどこが違う? 良いおばけと悪いおばけの区別は? そんな疑問に答えてくれる役立つ絵本だ。巻末には、登場したおばけとゆうれいの、懇切丁寧な解説に参考文献も付いている。
淡々とした解説文に徹した文章と、緑色と赤の補色をベースにした魔的野性味あふれるスズキコージの絵が、とてもよくマッチしている。画面から飛び出してきそうな迫力のおばけやゆうれいの姿はもちろんだが、おばけを近づけないためのお守りや、おばけ退治の呪文が描かれたページではとくに、子どもの視線が釘づけになるに違いない。(中村えつこ)