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写真家の旅―原日本、産土を旅ゆく。

価格: ¥2,800
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日経BP社
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心の中の原風景を呼び起こす ★★★★★
 写真と文章で「原日本、産土」を追い求めたこの本は、この日本という地に生まれ暮す我々の心の中にある日本の原風景を呼び起こしてくれる。
 人が押し寄せる著名な景勝地、よく知られた場所にこんな風景が潜んでいたのかと驚かされる。日本の原風景がこれまでの経験とそれによって培われた感性によって、見事に写真に切り取られている。著者は日本各地の海、山、川、湖沼、そして町や村を旅していくが、単に自然そのもの風景美を撮るのではない。「人の営みを含めた自然」こそ自然と考えるこの写真家の自然観がよく出た写真が並ぶ。
 しかし、普通の写真集ではない。エッセーと写真が一体になって著者の思いを伝える。文字が写真を補うのではく、写真が文字を補うのでもない。写真は写真の力があり、文章は知と情があいまったエッセーとして読ませる。写真と文章を合わせて新しい道を拓こう、と考えるこの写真家の意図が確かにうかがえる。
 志賀直哉の『城の崎にて』を読んでその表現や心のありようについて、「写真もそうありたいと思う。華美にならず、在りのままを淡々と表現することを心がけたいと思う」と語る。「志賀直哉の短編集は写真表現のヒント集の一面を持っている」とも
言う。どの言葉を選ぶかはどのように画面を切り取るかに通じる、というのだ。写真家でなければ気がつかない視点かも知れない。