だが、これらの作品群の中で倦むことなく自慰行為にふけり続ける詩織は十分刺激的といえる。
看護婦姿の詩織は大胆に下着の中に自らの細い指を突き入れている。肉の花弁をまさぐっているその姿を(下着の上からではあるが)捉えた開脚部のクローズ・アップは、文庫本という宿命ゆえ小こぶりなサイズとはいえ、相当な迫力を持って読者に迫ってくる。自らの行為の結果とどめることがかなわぬほど溢れ出した雫(しずく)が、白い下着を濡らしているといった演出がなされているのだ。濡れた下着が秘部に貼り付いた大胆な写真は、読者を捉えて放さない。
また女将姿の詩織は、和室の床に縦長の鏡を置いてそれをまたぎ、和服をはだけて自慰行為に及んでいる。肥大した熱芯を自らの指がこすり上げる様子を鏡に映し込み、それを見つめながら快楽に身をゆだねる詩織の痴態。ヘアすら期待することがかなわぬ時代の写真集だから、読者が彼女の中芯そのものをこうした作品の中で目にすることはもちろんない。それでも想像力はいやがうえにも刺激され、羞恥の心を失った詩織の細く白い指先が自身の温かく湿った肉唇の奥をすべりながら激しく往き来していることや、彼女の下腹部の辺りに愛液の甘酸っぱい芳香がひたひたと漂いだしていることが確かに感じられるのだ。
行為の末に果て、心地よい疲労感に包まれて横たわる裸身の詩織の額や頬にはうっすらと汗がにじんでいる。汗に輝く彼女の表情には性欲を満たし終えた女の幸せな充足感が現れている。
1993年、秋本詩織19歳。性の熱い疼きを独り健気に慰める彼女の痴態に愛しさを感じる写真集だ。