生について深く感じる書
★★★★★
この写真家の名前は展覧会などでよく見かけていたが、文章を読むのは初めて。文筆家ではないのに、読み手を惹き込む文章力の高さには思わずうなってしまう。単に表現が巧いというより、書く必然性に支えられているとでも言うべきか。写真作品の手のクローズアップや横須賀の風景もそうだが、色濃く人の生に近づく写真が印象に残る。本を読んで、最近「傷跡」を撮っていることを知った。傷跡を持つモデルを探すくだりは何とも面白い。撮影より暗室作業が好きだというエピソードも意外でユニーク。伊兵衛賞を受賞したり、ヴェネチアビエンナーレに出品したりと写真家としてはメジャーな活動をしている割には、身近に感じる話が満載だ。
だが、タイトルが示すように、内容はかなりハード。死について、また生についてとにかく考えさせられた。「写真は何と死に近いのだろうか」という言葉が印象深い。