「いじめによる自殺未遂」、「非行」、「極道の妻」と人生のどん底を体験してきた著者が、29歳で弁護士になるまでの軌跡を描いた本書は、変わった経歴を持つ女性の単なる「波瀾万丈記」ではなく、いじめ体験や、司法試験受験の際の勉強法などが克明に記されているように、子どもたちが直面するであろう問題に対して、具体的な対処法を伝えることに主眼が置かれている。本書が100万部を越えるベストセラーとなったのは、「いい学校からいい企業へ」といったモデルが通用しなくなった20世紀末の社会が、即効性のある新たな人生のモデルを切望していたからだろう。
村上は自身の作品の主人公の中学生に、日本には「希望だけがない」と発言させた。本書は「やればできる」という「希望」を提示する。両者は「生きぬく」、つまり、自らの意志でサバイバルせよというメッセージを発している点で共通しているが、現実を生きぬいてきた著者の言葉にはより力強い説得力がある。(中島正敏)