ソ連の社会主義を厳しく批判しつつも、歴史あるロシアの風土と文化には敬意を表し、また戦いそのものの全容を描くのではなく、実在の英雄ヴァシリの伝説をもとにした男と男の一騎打ち、そして極限状況下の男女の愛に焦点を絞ることで、壮大な人間ドラマを具現化させた、巨匠ジャン=ジャック・アノー監督の秀作。ヴァシリの恋人役レイチェル・ワイズを際立たせているのも、この監督ならではの素敵な賜物である。(的田也寸志)